6日の夜九時ごろ、両津は、池袋にいた。駅北口の、とあるラブホテルの一室、広さは、10畳ほど、黒革のソファーにどっかと腰掛け、二本の裸足をテーブルに置いて、ひとりでいた。
 「遅いな・・・」
 腕組みして、ひとりで呟いていた。中指で、左腕をコツコツとたたきながら待つこと数分、
 「まさか、金だけ取って、来ないなんてことはないだろうな・・・」
 そんな不安が口から突いて出た時、ドアがノックされた。
 「はい」
 「奈々です」
 やっと来たか、思わず彼はソファーを跳ね起き、そそくさとドアのとってを回して、引く。お辞儀する彼女は、歌舞伎町のキャバ嬢、レイとよく似ていた。年齢も、同じくらいだった。セミロングの髪に日本人離れした、ほりの深い顔立ち、そしてレイと変わらないくらいの長身にグラマラスな肢体、包み隠しているのはたった一枚の黒いキャミソール。違うのは、バストがレイはFカップで、奈々はGカップ、というところか。両津は無意識に、嬉々とした表情を浮かべた。
 「遅くなって申し訳ありません」
 ふっふっふっふっふ、と不気味な薄笑いを彼は浮かべた、ここで、せこい者なら、金銭に対する対価たる時間を気にして、うだうだと咎め立てするのだろうが、この両津力吉は、
 「気にするな」
 抑揚のない声で言った、それにどこか安堵の表情を見せた奈々だった、
 「よろしくお願いします」
 再度お辞儀して、入室し、携帯電話で到着の報告をした彼女は、大きなかばんを床に置いて、当然がごとく浴室でシャワーの支度を始めるのだが、その時両津が突如、テーブルをソファーの前から大きく右にずらした。
 「シャワーに・・・」
 薄い唇を開けた奈々に、両津は告げた、
 「ここで、四つんばいになって」
 テーブルがあったところを指して、薄ら笑いながら彼女に命じた。目線を落とす奈々に、
 「少し遅れたからな」
 「はい」
 奈々は、キャミソール姿のまま、四つんばいになった。
 「いい眺めだ」
 「・・・・・」
 恥じらいのにじみ出た表情が、両津の嗜虐欲に火をつけた。また、むき出しの谷間と、めくれ上がった太ももは、彼の一物を刺激した。ここでなぜか、奈々を目で牽制しながら、客は冷蔵庫の缶ビールを漁った。ロング缶を片手に、再度ソファーにどっかと腰掛け、両津は奈々の背中に、二本の裸足を置いて、プルタブを引いた。
 「くうっ・・・」
 のどを鳴らしてビールを飲む両津の姿を奈々は横目に見て、その双眸を濡らした。
 缶ビールを、底に少し残したまま右手に持って、両津はぼうっと天井を眺めた。奈々は四つんばいのままご主人様の姿を相変わらず横目で見ているが、声もかけない彼に、非情なまでのサディズムと、自身の惨めさに、知らず知らず下着まで濡らしていた。
 一時間ほど経って、テーブルにされたままの奈々が、
 「ご主人様、いつまで、こうしてるつもりですか?」
 どこか哀しさの混ざった口調のM奴隷に、両津は乾いた口調で、
 「辛いか?」
 「はい・・・もう腕が、ぱんぱんです・・・それに、こんなの・・・みじめです・・・」
 薄笑いを浮かべた両津だったが、彼女に、気の抜けたビールを差し出した。奈々は犬のように飲んで、
 「ありがとうございます」
 空になったところで床に缶を放り投げ、奈々の正面に来たご主人様は、彼女の両脇を抱えて、ソファーに抱き寄せた。そして奈々の肉感を確かめるように、両津は強く抱いた。Gカップの乳房が、気持ちよかった。また、M奴隷も、どこか表情がほころび、嬉しそうにしていた。
 しばらくして両津は、奈々の着衣を全て剥ぎ取り、全裸にした、白陶器のように白く、豊満で、なおかつきれいな曲線をかもし出した肉体があらわになった、右手で彼女の大きな左胸を強く揉みしだき、右の乳首をちゅうちゅうと音を立てて吸ったところ、それだけで奈々は体をのけぞらし、更に乳首を強めに噛まれると、エビ反りになってしまう、そのときに右手を胸から離してワギナを中指でピストンのごとく突いたら、痙攣して、ぐったりとなった。少時たって、
 「奈々、夜は長いよ・・・」
 「はい・・・」
 大柄な女をソファーに寝かせた両津は、透明なテーブルを元の位置に戻し、次に、その透明な台に、奈々を仰向けに寝かしつけた。頭と胴体が、テーブルに乗り、手足がクモのように下に垂れた。張りのある大きな乳房が上を向いて、ピンクの乳首が天井を突き上げているようだった。奈々をそのままにして、両津は彼女が持ってきたかばんを漁り、ロープを取り出す、そして四肢を、それぞれのテーブルの脚に綿ロープで固定し、美形の女をあられもない姿に変えたのだが、テーブルの脚を二周巻いた赤いロープが、まるで蝶を絡めとったクモの糸だった・・・
 再び両津は奈々のかばんを漁り、30センチほどの半透明なバイブを取り出す、そして彼女のワギナに挿入し、スイッチを入れたS男は、あえぐM奴隷をそのままに、缶ビールとTVリモコンを取りに行った、当然それら二つを手にソファーの前に彼は戻るのだが、どっかと腰かけた両津ははりつけにされた奈々を横目に、TVの電源スイッチを入れて、32インチの大画面に、経済ニュースを映した。
 「そんな・・・」
 ひどい、思わず奈々は口にした。
 「まあ、そう言うな」
 M奴隷の左乳首を咥え、両津が舌でもてあそぶと、一段と大きな嬌声を奈々はあげた。
 缶ビールと乳首を交互に口にしながら、両津はニュース番組を見た、後番組のスポーツニュースが終わるまで、その責めは続き、テーブルの上で垂れ流された愛液に彼はにやつく、それから、とんだご主人様は、有線のAVに、チャンネルを切り替えた。奈々は画面上の、女の裸をふいに目にして、羞恥に全身を染めた。
 「お許しください、辛すぎます・・・」 
 「そんなに痛いか?」
 「違います、精神的に、きつすぎます・・・」
 そうか、わかったよ、という表情で両津はバイブを掴み、右手の缶を床に放り投げ、奈々のたわわな左胸をわしづかみ、それぞれを強く刺激してやる、テーブルはおろか床まできしまんばかりにバイブを連続ピストンさせると、ほんの数分で奈々は大きな嬌声をあげて、果てた。
 「ちょっと酷だったかな・・・」
 気絶したままの奈々を横目に、両津はビールを飲みながらAV鑑賞を続けた。
 気がつけば、空は白み、やがては明るい日差しが____
 日の出どき、両津は奈々の顔を軽く叩いて起こす。それから、何を言わずに、四肢をくくりつけたロープをほどく。
 「ありがとうございます」
 ゆっくり彼女の体を、ご主人様は起こした。しかし、連れて行ったのは、ベッドなどではなく窓のそばだった。
 「いやっ」
 「ふふふ、恥ずかしいか」
 「お許しください・・・」
 奈々を羽交い絞めにして、彼女の胸を窓ガラスにS男は押し付けた。
 「ああっ、つめたい・・・」
 窓ガラスにひしゃげた奈々の胸が、両津の嗜虐欲をさらに刺激した。
 「どうだ、気持ちいいか」
 「恥ずかしい・・・」
 ホテルは、5Fの一室だった、通行人が見上げれば、奈々の裸体は丸見えだった、また、両津は水色の開襟シャツに、濃紺のスラックス姿だったから、自分だけが裸にされていて、殊更恥ずかしかった。それゆえか、奈々の股下には、おびただしい量の愛液があふれた。
 30分ほど、奈々の体は太陽の光を、窓越しに、強制的に浴びせられた。
 「もう許して・・・」
 幾人かの通行人が奈々に気づき、目を丸くしていた。また、奈々の裸体を凝視する者もいた。彼らの好奇に満ちた視線が、奈々に羞恥と快楽を、もたらしていた。
 「ここでおしっこをしたら、許してやる」
 「そ、そんな・・・」
 「いやならおまえは時間までここではりつけだ」 
 「わ、わかりました・・・やります・・・」
 奈々をはりつけにしたまま両津は、空のロング缶を手にした。そしてあろうことか、彼女の股間に、缶をあてがい、放尿を促す。
 「いやっ」
 かぶりを振る奈々だったが、
 「ずっと見世物になるか?」
 美しい顔をゆがめ、くちびるを噛んで、奈々は目を閉じた、程なく、彼女の股間に、じょおおおお、といういささか下品な音が響いた。それが終わったとき、奈々は、恥ずかしさに、思わず床に崩れ落ちた。そんな彼女の眼前で両津は、ロング缶をたぷたぷと、いわせた。音を聞いて、涙をこぼす彼女の背中をご主人様は抱いた、
_____少しやりすぎたかな。
 しばらくそのままやり過ごしてから、両津は奈々をベッドに連れた、さすがに彼も裸になり、互いに裸でたわむれた。しかし、これで終わるほど、このS男は優しくなかった。三度目の絶頂を迎えた奈々を、こんどはガラスのテーブルに、手足を先ほどに同じく綿ロープでくくりつけて、うつぶせにはりつけにした。ガラス板にはみ出した乳房と、丸見えの玉門が、卑猥だった。
 「さあ、帰るか」
 裸のまま、服を持って退室するそぶりの両津に、
 「や、やめてー!」
 四肢をテーブルの脚にくくりつけられたまま、奈々が叫んだ、
 「おれの一物から、カルピスがあふれそうなんだけど・・・」
 その一言に、察したように奈々は言う、
 「誰にも、言わないって約束してくれますか?」
 当然だ、といわんばかりに
 「もちろんだ」
 目じりを歪め、口を硬く閉じてから、奈々はテーブルに四つん這い状にはりつけられたまま、両津を受け入れた。しかし彼は、何分と持たず、膣外に射精した。それでも、奈々はぐったりとなっていた。
 プレイは終わり、拘束を解いて、両津は浴室でM奴隷の体を洗ってやる。お返しに、奈々もご主人様の体をシャワーで洗う、そのときふいに、
 「ホントは、優しい方なのに・・・」
 彼の右乳首をきゅっとつまんで、言う。
 「でも・・・ひどい人」
 奈々は微笑した。
 「まだ続けるか?」
 「今日はもう、許して・・・」
 彼女の苦笑いが、はにかみ笑いにさえ両津には映った。
 
時計は、朝九時を指していた。
「奈々です、ただいま上がりました」
室内のプッシュホンから、彼女は連絡した。二人は退室する。腕を組んで歩くさまが、まるで恋人のようだった。エレベーターの中で、キャミソールごしにいたずらする両津に、
「エッチ〜」
悪態をつく奈々だったが、どこかうれしみが表情に、にじみ出ていた。
フロントにキーを返して、路上を二人で腕を組む姿は、どう見ても風俗嬢と客には見えなかった。男もまた、美形で、背こそ奈々より5センチ程高いくらいだが、何より、透き通った双眸が、見るものの記憶に残った。しかしそれは、無類の好色さで、スポイルされていた。
「うりうり」
右ひじを、奈々の左胸で回すばかりでなく、つんつん、乳頭をつついては、ひじにかばんをかけた右手で、彼女に右腕を叩かれていた。ちなみに、ブラは両津がホテルを出る前に取り上げていた。なので、黒い下着は、彼のクラッチバッグに入っている。
「両さん」
「なんだ?」
「エッチ!」
「恥ずかしいか?」
「すっごい恥ずかしかった。でも・・・」
「でも?」
「言わせないで、イジワル!」
ぎゅうっと両津の右腕を、両手で捕捉する。ノーブラの両胸が、彼には心地よかった。しかしそれは長くは続かない。池袋駅の、北口に差し掛かった。
「じゃあ、また。金があったら」
「短い時間でもいいですから」
去り際に、ぎゅうっと抱きしめ、人目もはばからずに両津は奈々の薄いくちびるにキスした。放れた彼女は恥ずかしそうに、
「またね〜」
ノーブラの胸を気にしながらも笑い顔を見せて、手を振り、両津の眼前を去っていった。

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